ソフトウェアモデム

この記事は約5分で読めます。

Windows95が発売された頃、インターネット通信をしたいとなればモデムという装置を新規に購入する必要があった。
今のようにUSBに接続すればOKという訳にはいかず、ほとんどのPCに搭載されていたRS-232Cという端子にモデムを接続する必要があった。単に線を繋げただけではダメで、それなりに設定知識が必要だった。
Windows95が発売された頃の通信速度は14,400bpsが一般的で、昔からパソコン通信を利用していたユーザーが9,800bps、やや出遅れたユーザーが28,800bpsという通信速度のモデムを使用していた。

通信速度は年々高速化したのだが、このモデムという装置は定価で\40,000~\60,000程度するのが一般的だったため、毎年買い換えなんかとてもできる商品では無かった。
最大通信速度が倍になると、電話代がペイできるだろうということで買い換えを検討したのだが、月に数時間程度のユーザーは1~2世代前のモデムを使い続けるのも当たり前の事だった。
今はスマートフォン等で使いすぎの帯域制限なんかされると、最大128,000bpsの速度にされてしまい「使い物にならねー」なんて言っているが、あの頃を思えば今は制限されていても超高速なのである。ちなみに老兵は、メールの受信程度であれば、未だにこの速度でも全く不満は無い。

28,800bpsから33,600bpsへ高速化されたモデムが発売されたときは、「たったそれだけかよ!」と買い換えをしなかったユーザーも多かった。もう技術的に限界を迎えていた。ちなみにG3FAXは現在においても、この通信速度が上限である。
限界と言われてはいたがISDN回線が普及し、トリッキーな方法を使って56,000bpsの通信が可能なモデムが発売された。これは多くの方が恩恵を受けたため買い換えを促進した。しかもインターネットの利用が加速度的に増えたため定価も1~2年前の半額くらいで発売されるようになった。本当にこれが技術的に最大通信速度と言われていたので、多くの方が買い換えをしたものだ。この速度でも不満がある方はISDNの64kpbpsへ回線の変更を行った。
Windows98の頃である。アナログ電話回線とは言え2~3年で通信速度は飛躍的に上がった。

CPUの速度は日進月歩で飛躍的に上がり、ハイエンド機を購入したのに翌年にはエントリー機として発売される位のスピード感だった。初期は音を出すにも別売だったが、だんだんと内蔵され、インターネット接続に必要なものは後から買わなくても済むようになっていった。モデムも当然内蔵された。
そんな中、老兵が「何だこれは!革新的!!」と感じたデバイスの一つに、ソフトウェアモデム(ソフトモデム)がある。

1996年にインテルがAC’97(Audio Codecs ’97)という規格を提唱した。「今後のサウンド環境は、最低限この規格に準拠しましょうね!」というもので、実は今のサウンド環境とさほど変わらない。1997年に仕様が確定し、翌1998年にYAMAHAからYMF738というサウンドチップが発売された。サンプル部品価格で\3,000位のものである。今は廃れてしまっているが、XG音源に準拠したMIDIと呼ばれるサウンド規格にも対応しており、ある意味今より高機能だったかも知れない。このチップさえあれば、サウンド環境が整ったAC’97に準拠し、さらに追加で56Kモデムの機能も搭載されていた。

多くのデスクトップ機は、このチップを使ってサウンドとモデム機能をPCへ搭載した。そうなると、だんだんと外付けのモデムは必要なくなっていった。
衝撃を受けたのは、そのモデムの性質にあった。

従来のモデムは専用チップを使用して、リアルタイムで演算をさせて送受信の音に変換して通信させていた。当時はその方法しか無かったからである。
ところが、このチップはパソコンのCPUに直接計算をさせるようにして専用計算をするチップをリストラしてしまった。端子等、アナログ部分が必要な一部を除いてコストダウンを図った。
元がサウンドチップなので、受話器の口の部分はマイク部分、耳の部分をスピーカー部分に接続して電話回線に繋ぐのだ。ピーガー・・・という音をCPUのみで計算させて送受信してしまうという、今までに無かった手法だった。

CPU
CPU

お願い!外付モデムさん!
今から送るデータを、通信データに変換してください。
もしも間に合わなくなったら、教えてね!

モデム
モデム

アイアイサー!

こんな世界だった。それが・・・

CPU
CPU

お?外付モデム?
データ変換は自分でやるから、おまえいらね。

モデム
モデム

・・・

という状況に変わった。

出始めの頃はデメリットも多く通信中は音が出ないか、非常に悪い音だった。さらにエントリー機だと通信中は少々カクカクしてしまうこともあり、今ひとつ不安定だった。ただかなりのコストダウンになったので、多くのPCに採用され普及した。
まもなくADSLや光回線等が普及して、有線LAN経由が一般的となったのだが、ノートパソコンには引き続き搭載され続けた。CPUがGhz単位になってくると、エンジニアでもハードウェアモデムとソフトウェアモデムの違いって何?という位にソフトウェアモデムが一般的になったのだが、実質的に2010年代初めにはノートパソコンにも搭載されなくなり消えていった。

このソフトウェアモデムの考えだが、実は今も残っている。主なところが有線LANだとかWi-Fiだ。こちらも登場当初は専用のチップを使って通信をしていた。10MbpsでもCPUだけで処理するのは、とても無理だった。そのためLANボードだけで数万円とかは普通のことだった(もちろん100Mbpsのカードが出た頃には1万円から数千円程度と安価になった)
今のCPUはGhzは当たり前だし他コア化で、1Gbps程度の通信速度であれば大した演算量でも無いのだ。他の機能も含めたチップの一機能になっていて、当たり前の様に搭載されている。現在のCPUに取っては暇つぶしに通信(一部の専門処理はLAN側のチップでしているけど)している様なもので、全力の1Gbpsで通信してもCPUリソースの1%も使っていないだろう。
じゃあ今は専用ハードウェアは無いのかというと、サーバー関連は通常専用のチップが搭載されている。LANの通信も裏では「あ、ごめん、ちょっと間に合わないので待って!」みたいな事が発生する事があるのだが、サーバーが頻発すると大問題だ。他のアプリケーション等に影響してしまう。そのため多くのサーバーはコストをかけて未だに分業化がされたチップを搭載している。しかも今度は昔はCPUが担当した部分まで専用チップが担っていたりする。よりCPUに仕事をさせないように専門化が進んだ。

こんな技術を開発したエンジニアは専門職だ。まだまだ代替が難しい領域だと思っているのだが、

くそ上司
くそ上司

エンジニアを雇うのはコストが高いんだよね。
会社にとって部品みたいなもんだ。
チャッピー、ジェミニ。今後は君たちよろしく!

ChatGPT
ChatGPT

アイアイサー!

Gemini
Gemini

アイアイサー!

凄腕エンジニア
凄腕エンジニア

・・・

ソフトウェアモデムを思い出し、なんかこんな未来が見えてきた・・・

コメント