10年位前だろうか。
神田駅西口商店街の裏路地に、たしか「蔵カフェ」という酒粕料理のお店があり、ここが豊島屋さんが経営されていた。今は神田スクエアに店を移してしまったようだ。
酒粕と日本酒は当然豊島屋のもので、店内には東村山にある酒蔵の紹介写真が貼られていた。
絶対行かねば!と思ったまま時間が過ぎてしまい、やっと念願叶っての訪問である。
こちらの酒蔵では時期によっては「サタデー酒蔵見学」を開催しており、予約不要で見学可能だ。

東村山といえば「志村けん」だ。ちょうど「8時だョ!全員集合」を見て育った世代。
既に世の中はカラー放送が一般的だったのに、白黒テレビで見ていた。東村山音頭は非常に思い出深い。それで東村山という町を知ったものだ。
ということで、まずは志村けん氏にご挨拶。

ここから徒歩で豊島屋酒造へ向かう。15分くらいかかった。意外と距離があるのだが、府中街道はかなり車が渋滞していたので、タクシーでも時間はかかると思われる。
門が閉まっていたので、もしかしたらお休み?とか思っていたら、右脇に狭い入口がありここから入る。
売店で時間まで過ごす。時間になったら1,000円を支払い見学スタートだ。

まず井戸の紹介から。入口から見える煙突と井戸が象徴的。
こちらは2番目の井戸とのことだ。

裏から見ると赤いヤモリ(家守)が描かれている。一般的に幸福と繁栄の象徴で「家を守る神様」である。実際によく見かけるらしい。こちらのヤモリはお酒によってはラベルにもある。
こちらの酒蔵は、一般的にはあまり知られていない。
実際のところ、本店だとか神田スクエアにある角打だとかでないと、こちらのお酒は中々見かけない。
しかしながら、400年以上の歴史を持つ東京の酒蔵で非常に有名である。
ざっと紹介すると
・神田明神と明治神宮へ御神酒として奉納されている。また双方とも授与所で御神酒を頒布されているが、こちらの「金婚」というお酒である。知らなければただの御神酒でしかない。
・ひな祭りの歌の3番に「すこし白酒めされたか、あかいお顔の右大臣」という歌詞があるが、この白酒は「豊島屋の白酒」と呼ばれ、江戸時代からの名物である。
・十返舎一九による「東海道中膝栗毛」に豊島屋がでてくるが、もちろんこちら。
・長谷川雪旦の「江戸名所図会」に「鎌倉町豊島屋酒店白酒を商ふ図」として描かれている。
などなど、知れば知るほど歴史を感じさせるだろう。
この手の話を、深掘りしたお話を頂けた。かなり面白いが、まだまだ前座だ。

まずは和釜から。
昔はこの釜を使って「蒸きょう」をしていたそうだ。
10kgを一単位にして洗米から蒸しまで手作業で蔵人の感覚だけで行っているのだが、こちらの酒蔵はなんと5人の蔵人だけで運営しているそうだ。
新しい方が入ってもマニュアルなんかを用意することはしないそうで、今日作ったお酒の造り方は明日には合わないため、毎日の経験が物を言うそうだ。
秒の単位で調整が必要で、まさに職人芸な感じ。

さすがに今は和釜では蒸していないそうで、後ろにある連続蒸米機を使っているそうだ。この辺は、何処も同じような感じだろう。
但し火入れには、まだまだ現役で使っているとのことだ

続いて麹室。こちらはエアコンが効いていてとても涼しい。寒いくらい。
入口に「ハクヨー自動製麹装置」のプレートが貼ってあった。製麹機は知っていたが、メーカーも装置もちょっと見慣れない。そもそも麹室の見学は行っていないところが多いし、まだまだ知らないところだらけで勉強になる。さすがに中には入れない。

こちらも薮田式圧搾機を使用。
圧搾板が外されている状況は初めてだ。パイプも外されていてただの鉄の塊にしか見えない。

ちょっぴり危なげなはしごを登って、2階へ。かなり近い場所でタンクを見せて頂く。
もう仕込みは終わっているので、日本酒の香りは全くしない。ちょっと残念。

途中、サーマルタンクも見つける。これがないと大変である。

こちらは増築の跡だそうだ。新旧の蔵の境目。

最後に1号井戸を見学。
見学時間は1時間の予定だったが、ここまでで倍近くかかっている。
お話をされた方は、お年を召された方だったがかなり面白い。良く淀みなく長時間しゃべれるものだと感心する。
「君の名は。」の口噛み酒のお話だとか、ちゃんと映画を見ての説明なんかもある。とても若い。
試飲として1,000円だったが、試飲が無くても1,000円払う価値があるね。

最後に試飲の時間だ。
今回はこの5種類とみりんを試飲。
NEON (BLUE)は純米吟醸無濾過生原酒
十右衛門も純米無濾過原酒
しかも両方とも八反錦を使用しており、麹が違うだけとのことだ。
そもそも八反錦は広島のお酒でしか見たことが無い。竹鶴八反とか。関東ではかなり珍しいのでは無いだろうか?
早速試飲というか味比べ。
NEON (BLUE)は香りが芳醇。辛口でも甘口でも無い感じで、すっきりとしており飲みやすい。
対して、十右衛門は創業者の名前であり強いこだわりのある日本酒。こちらは辛口。香りは強くなく、お米の味を感じる。少々独特なテイスト。やや辛口だろうか。熟成無濾過生原酒
両方とも特徴のある日本酒なのだが、麹だけでここまで味が違うのか!と良くわかる。
北海度の酒米「きたしずく」を使用した熟成無濾過生原酒や貴醸酒、みりんなども頂く。どれも珍しい。貴醸酒はチーズなんかが欲しくなるね。みりんは少々苦手だったな。やっぱり料理に使う方が良い感じ。

試飲をしていたら、2時間経っていた。
豊島屋フェスタで1時間もかからず完売したという日本酒を発見。こちらと貴醸酒を本日のお土産にした。かなり満足度の高い酒蔵見学だった。

【おまけ】
帰りに追加で、駅前にある餅萬さんに立ち寄る。折角なので東村山名物の「だいじょぶだァー饅頭」を買わねば。心の中で「一丁目一丁目ワーォー」と叫びながら購入。
小倉餡の「だいじょぶだァー饅頭」3個と、うぐいす餡の「だっふんだァー饅頭」2個が入っている。自宅で頂いたが幸せな感じ。志村けん氏を思い出す。おみやげとしてお勧めだね!
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