CD-ROMと消えゆく円盤装置 後編

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前編から

音楽CDをCD-Rへコピーすることが一般的になった2002年頃、発売元の多くが一斉にコピープロテクトを搭載するようになった。
CCCD( Copy Controlled Compact Disc)とよばれ、通常の方法だとPCからコピーができないような仕組みを搭載した物だ。
音楽CDは最初から読み取りエラーを考慮してエラー訂正符号が挿入されている。多少の読み取りエラーであれば修復可能なようになっていて、音が途切れるようなことは無い。
余裕を持って設計されているので、意図的に間違ったエラー訂正符号を入れて、PCからは読み込みをできないような仕組みにしたものである。

このCCCDだがCDの規格を満たしていないので、再生をサポートする機器は存在しなかった。むしろ再生しないように注意喚起がされていた。子会社が発売したものに対して、親会社が使うなと言う出来事もあった。
発売元は音質は変わらないとの触れ込みだったが、明らかに音質は悪かった。若干オーディオにも凝っていた時期があり、それなりの機材をそろえて楽しんでいたのだが、初めて聞いたときは「不良品じゃないか?」と思ったほどである。
CDのレンズを掃除しないと、読み取りエラーが発生してこもった音になるのだが、まんまそんな感じの音だ。おかしくない程度に補正されているだけで非常に音の解像度が悪い。
聞くに堪えない代物だった。自分は音楽CDは買って楽しむ派で数百枚のコレクションがあったのだが、CCCDだらけになり、これを機に買うのを一切止めた。

一般的な方法ではコピーは難しかったものの、工夫するとコピーができた。
しかもエラー訂正してCD-Rに書き込んだ方が音が良くなったので、そんな事をするくらいなら原本のCDの方が邪魔になる。レンタルCDで十分になった。
正規ユーザーが制限されただけだったので、大変な不評を買い結局ほんの数年で事実上廃止された。自分の様に戻らないユーザーも多く、結局顧客を減らしただけだろう。

ちょうどこの頃DVDの視聴が普及し始め、DVDもCDと同じように書き込みができるようになった。
ただDVD-R(RW),DVD+R(RW),DVD-RAMと規格が乱立した。日本においてはDVD-R(RW)の規格が一般的で、こちらのメディアの方が安価である。
DVDについても買って楽しむ派で、これまた数百枚のコレクションがある。実は10年位封を開けていないDVDが数十枚あったりする。。。
DVDについては当時「強固なコピープロテクト」が搭載され、一般的にはコピー不可能と言われていた。しかしながら、とある会社のDVDプレーヤーソフトに不備があり、それを基に解析されあっというまに「DeCSS」と呼ばれる解読ソフトが発表された。
DVDは普及前にコピーが可能になってしまったのだ。日本では明確に違法になったが、このソフトを使用したり開発することが違法では無い国もあり、その国では何ら問題は無く現在に至っている。

ただCDと同じようにコピーされまくるかと思いきや、一部を除いて意外とライトな感覚でコピーされることは少なかった。
映画の場合DVD-ROMとして最大8.5GBの容量があるのだが、当時のハードディスクの容量を考えると、そのまま保存しておくことが難しかった。DVD-Rへコピーするにも4.7GBのメディアが事実上最大でコピーができなかったし、現在は片面2層と呼ばれる8.5GBのメディアを使用すればコピーはできるのだが、未だに高価である。
容量サイズがある意味コピープロテクトとして機能した。
別の形式で圧縮しなおし、所謂ファイル交換ソフトでの流失は続いているのだが、当時は再圧縮に相当の時間がかかった。またダウンロード側も時間がかかるため、一部の方のみ大量に保有している状況だった。

PCにおいてはノートパソコンにおいてもDVD-ROMの読み込みとCD-R(RW)の読み書きができるコンボドライブ搭載が一般的になった。もちろんDVD-RWを搭載した機種もあったのだが、CD-Rを超える容量のデータを書き込むことも少なく、DVDで映画を楽しみ、音楽CDがコピーできれば良いので不都合は無かった。CD-ROMが普及すると同時にフロッピーディスク搭載も徐々に無くなっていった。

DVDが普及し始めると、より大容量メディアの登場が待たれた。
歴史に消えたHD DVDとBlu-ray Discである。
HD DVDとBlu-ray Discは全く互換性は無く、円盤サイズが一緒ということだけだ。
ビデオのVHSとベータ戦争がごとく、両陣営ともしのぎを削った。
当時はどちらが勝つのか、それとも併存するのか誰にも分からなかった。
よってPCの世界では、HD-DVD,Blu-ray,DVD-RW,CD-RWと何でも読み書きできるマニア向けドライブが発売されたものだ。

結果、Blu-ray Discが勝利を収めた。勝因は容量だったと言われており、HD DVDはリリースが先行したもののの最大30GBの容量だった。この容量だとハイビジョン画質で2時間の録画が難しかった。対してBlu-ray Discは50GBの容量があったので余裕だった。VHSも2時間の録画時間が標準だったので、これより少ないと使い勝手が悪いのだ。

こうしてBlu-ray Discが勝利すると、Blu-ray,DVD-RW,CD-RWのコンボドライブが発売されたのだが、実際にPCへの搭載は少なかった。一部のパワーユーザーのみである。
Blu-rayを再生するための要求スペックが高かったことと、ノートパソコンなどで視聴する場合に解像度が足りず、DVDでもさほど画質が変わらなかったためだ。
しかもDeCSSの教訓からか、PCからBlu-rayを再生する場合は数年ごとに鍵の交換が必須となった。サポートが終了すると同時に再生できなくなるため、事実上買い直しが必要になりライトユーザーにはハードルが高かった。

もちろんBlu-rayもRW形式で読み書きできるのだが、USBメモリーの普及によりBlu-rayはほとんど必要がなくなっていった。USBメモリーの方が扱いも簡単で容量も多い。書き込みも高速だ。今は32GBだと500円前後で購入できるし、Blu-rayよりも容量の大きい64GBでも700円前後だ。そもそもBlu-ray搭載のPCが少ないので、データの受け渡しができないのである。
特に最近ではクラウド経由でデータ受け渡しをすることも増えてきたため、円盤メディアは全く必要がなくなってきた。
映画などにおいても動画視聴サービスが普及したため、全くメディアを必要としなくなった。結局Blu-rayは普及する前に衰退に至っている。
私自身も10数年前にタワー型PCへBlu-rayドライブを搭載したのだが、実際に書き込んだのはバックアップ用途の数回だけだった。
現在はUSBのBlu-rayコンボドライブを所有しているが、CDやDVDの読み込みだけでBlu-rayを必要としていない。年に数回利用まで減ってきており、もう円盤メディアが無くてもそう困らない。

一応、Blu-rayの次世代規格でUHD BDという規格がありゲーム機器などに搭載されているのだが、あまり知られていない。
後10年もするとフロッピーディスクと同じで、きらきらした謎の円盤になるのだろう。

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